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「丁寧な暮らし」って結局何なの? vol.1

アリゾナの木こり、ノリで岐阜の秘境に移住

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この連載は... 縁もゆかりもない飛騨古川に移住をし、「白石さんちはやばい!」とメディアが殺到するほどに田舎暮らしを満喫する白石さん。カンボジアで暮らし、アリゾナで木こりをし・・・と数々の”偏”歴を重ねてきた白石さんが、飛騨古川で暮らす理由とは・・・?「丁寧な暮らし」と聞くとイラっとするあなたに読んでほしい、秘境夫婦を題材にしたエッセイ。

丁寧な暮らし

木の中に木があって、もっとよく目をこらすとさらにその中に木がある。そんな、たくさんの木々が轟々と唸る山の中を、私たちを乗せたバスは飛騨高山の街を目指して走っている。

丁寧な暮らし

 

午後8時、東京からのバスは飛騨高山のバスターミナルに到着した。新宿から直行で6時間。海外で言えばベトナムに着くぐらいの時間だ。

 

「今日は40kmも自転車で走ってきたんだよ~!」

 

そう言いながらも全く疲れを見せない様子で出迎えてくれたのは白石達史さん。飛騨高山の近隣の町「飛騨古川」に住む、千葉出身の33歳だ。飛騨古川にあるツアーの催行会社「SATOYAMA EXPERIENCE」のサイクリングガイドを務める彼は、6年前に友人の紹介がきっかけで、何の地縁も血縁もない飛騨古川にいきなり引っ越してきた

その前はアリゾナで木こりをし、その前はカンボジアで暮らすなど、住む場所に関して言えばかなりの“偏”を重ねてきた彼だが、今は古川から引っ越してしまうから築70年の家を、改修しながら住んでいるらしい。

彼の家は古川の街中かられた山沿いにあるのだが、なぜかどこからともなく「白石さんちはヤバい」という噂が流れ、その暮らしぶりが雑誌で取り上げられるほど。そんな彼のところには噂を聞きつけた人々が全国各地からひっきりなしに訪ねてくる。彼の奥さんもその中の1人だった。友人の紹介で白石さんの家に遊びに行った、当時東京でバリバリのOLをしていた実果さんは、その場で達史さんと飛騨古川の暮らしに一目惚れし、10日後には婚約したというから驚きだ。

なぜ彼らは血縁も地縁もないまま、全く見知らぬ土地に移住を決意できたのだろう?そんな疑問を抱いて、今回の旅では秘境夫婦を飛騨古川に尋ねた。

 

アリゾナの木こり、ノリで飛騨古川に移住

丁寧な暮らし

「高山は、昼の町並みもとても綺麗なんだけど、本領発揮は夜からだよ!飲み歩かないのはもったいない!」そう言いながら白石さんが着いたばかりの私を連れて行ってくれた場所は、飛騨高山の名物ディープ飲み屋街「東海道」。

細い路地には、幾つもの小さな飲み屋が連なる。実はこれ、一つの長屋を間仕切りで仕切ったもので、中で全部繋がっている。

この通りのお店の名前は、全て東海道五十三次の街の名前から取られているそうだ。入居する際には、自分の好きな地名を選んでつけられるらしい。

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飛騨牛のホルモン焼き屋や老舗の小料理屋など、外観からして美味しそうな店ばかり並ぶ。



その中の一つ「ゆい」にお邪魔した。由来はもちろん「由比」。由比が浜ではなく、静岡の方の「由比」だそうだ。

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のれんをくぐるとそこには……。



丁寧な暮らし

入ってすぐ、おかみさんの威勢のいい声が響く。実はこの店、2ヶ月前に出来たばかりなのだそう。娘さんと二人で切り盛りしている。

東京からです、というと、女将さんはその真っ白な顔をふくふくと輝かせてもてなしてくれた。



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小料理「由比」 17時~23時頃まで

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からしどうふ、漬物ステーキ、けいちゃん焼き……と、高山の人々が普段から食べている定番の料理がメニューに並ぶ。日本酒の棚には、この地方の人々にとっては定番の日本酒蓬莱」が。おかみさんの料理は実家の和食屋仕込みなんだとか。どれもこれも、非常に美味しい。

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地方移住がブームになったのは震災直後だ。わたしの友達、特にフリーランスの人々が、こぞって九州や近畿地方に移住していった。彼らの中には数年たって東京に戻ってきた人もいるし、さらに遠くに遠くにと移住している人々もいる。

一方で、どの地方自治体も懸命に若者の移住を呼び込んではいるけれど、地域おこし協力隊の地方定住率が60%を切っているとおり、定着はなかなか難しいみたいだ。

けど、白石さんが移住したのは震災前。なんのコネも、家もない状態で古川にやってきた。

「僕は千葉育ちなんだけど、もともと東京での生活にギモンを持っていて、カンボジアで働いたり、アリゾナで木こりをやったりしてたんだよね。それで、2010年に一旦日本に帰ってきて、これからどうしようかなって時に、この会社ができるから働かない?って言われて。岐阜にも高山にも古川にも、なんの縁も知識もなく、フラッと。その頃は移住者なんか全くいなかったから、最初から近隣のほぼ全員が『東京から引っ越してきた奴がいる!』って知ってたみたいだよ」

最初は賃貸の一軒家に住んでいたが、白石さんにはもともと、家を手に入れ本腰を入れて改築してみたいという欲望があったという。

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午後11時40分の通称「酔っ払いバス」で古川へ。かなり遅い時間まで、高山古川の路線はバスが走っている。

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確かに、この時間の車内は酔っ払いばかりだ。

飛騨古川のバスターミナルにつき、そこからタクシーで10分。

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ようやく「白石さんち」にたどり着いた。

 

「いいでしょう?壁も床も照明も、全部自分たちの手で作ったんだよ!」

そう言って、白石さんが通してくれたのは……

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vol.2へ続く» リノベーションの全てはyoutubeが解決する

 

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1日目の夜、「由比」の次に伺ったのは、バスターミナルから歩いて10分程度の居酒屋。

このお店、なんと店名が無いのだそう!

当然食べログにも載っていないし、住所も不明。地元の人には「どや」と呼ばれている(マスターがつけたってわけではない)らしい。

席に着くなりマスターが適当にその日の気分で2~4皿出してくれる。小アジのシシトウいため、麻婆ナス、ツナペーストをがっつり盛ったガーリックトーストなど、地元の野菜をたっぷり使った料理ばかり。全てがものすごく美味しい。

東京神田出身のマスターは口数も愛想も少ないのだが、なぜか居心地がいいのは、天井が高く、風が吹き抜ける作りのせいだろうか。更地から自分も設計・デザインに加わって建てたという店の内装は、葦でできた壁が涼しげ。時間をかけてアンティークショップで選んだという吊り下げ照明の明かりが程よい暗さで気分が落ち着く。店の隅々にまで、丁寧に手間をかけて造られたことが感じられる。

もし訪ねたかったら地元の人に「どや」ってどこですか?と聞いてみてほしい。飛騨高山でも都会でも、他にちょっと見たことのない、オンリーワンな店。

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▶︎ vol.2 リノベの全てはYouTubeが解決する
▶︎ vol.3 家は”自分の世界を表現する”ためのカンバス

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この記事を書いた人

小野 美由紀

小野 美由紀  

作家。1985年東京生まれ。著書に絵本『ひかりのりゅう』『傷口から人生。~メンヘラが就活して失敗したら生きるのが面白くなった』『人生に疲れたらスペイン巡礼 飲み・食べ・歩く800キロの旅』がある。趣味はサーフィンと琉球空手。

ありきたりじゃない旅Guide

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