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沖縄移住 × 働く女のモラトリアム vol.4

「東京から沖縄に移住して、私はのんびり生きやすくなりました」という美談を書けると思っていたけれど②

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この連載は... 2016年6月、縁もゆかりも思い入れのカケラもない沖縄に移住した。きっかけは友人からの電話。「組織から逃れて好きなことを仕事にすれば楽しく生きられる」と信じて会社を退職し、フリーライターになってから約1年。仕事と焦燥感と将来への不安に追われて、久々に死にたくなっていたタイミングだった。

「東京から沖縄に移住して、私はのんびり生きやすくなりました」という美談を書けると思っていたけれど

「沖縄移住さえしてしまえば、きっと人生が180度好転する」
 
なんて、極端な期待はしていない。
 
 

だけど、もしかしたら、沖縄で何かが大きく変わるかもしれない。
 

仕事が
生活が
恋愛が
心が
私の人生そのものが
 

もしかしたら、今よりちょっと、良くなるのかもしれない。
 
 
心の奥底には、そんな期待が確かにあったのだと思う。
 

沖縄移住
 

実際、移住直後の私はわりと良い状態だった。

新しい環境では毎日発見の連続だった。美味しい沖縄料理もたくさん堪能した。キレイな海も見に行った。海辺のオシャレなカフェも回った。
 

沖縄移住
 
仕事も好調だった。

「ぜひ記事を書きませんか?」と仕事の依頼も多くいただいた。「東京でそれなりに頑張っていたライター」は沖縄でもそれなりに需要があった。嬉しかった。
 

沖縄移住

(声をかけてくださった沖縄の編集者・みやねえさん(写真右)と)
 

無事に家も見つかった。

沖縄中部・宜野湾市のシェアハウスで3人暮らしをすることになった。新築の3LDKでキレイな部屋だった。シェアメイトの2人も優しくて良い人達だった。
 
 
「これはやっぱり、移住して正解だった」
 
当時の私は、確かにそう思っていた。
 
 
沖縄移住

 

ある日、1文字も書けなくなった。
 

きっかけは、自分の記事についていた否定的なコメント。

記事の内容に賛否がつくことはあれど、「面白くない」「読みにくい」「ウザい」など、ストレートな中傷表現が並んだのは初めてで、見た瞬間に動悸がした。
 
 
気を取り直して原稿を書くも、しばらくして手が止まる。頭に浮かぶのは、自分の記事にならぶ批判の言葉。
 
“こんなことを書くと「キモい」と言われるかもしれない”

“こんなことを書くと「ウザい」と言われるかもしれない”

“こんなことを書くと「こいつバカじゃないの?」と言われるかもしれない”
 

空想上の批判に怯え、書いては消し、書いては消し、結局1文字も進まないまま1日を終える。

そんな地獄が4日間続いた。
 
 

専業ライターのくせに、原稿が書けない。
 

これで「真崎はダメだ」と思われるかもしれない。一気に信頼を失うかもしれない。もうお仕事をもらえないかもしれない。

それは、とてもこわい。
 

東京、沖縄、どこにいたって一度インターネットにアクセスしてしまえばそこには世界中の人たちがいる。住む場所を変えてもネットに映る景色は変わらない。

あぁ今日はあの記事とあの記事がたくさん読まれているな。あのライターさんはいつもすごいな。それに引き換え私は、なんて無意味な比較で気づけば心が溺死寸前。
 
 

1つの不安が肥大化して、ネガティブな思考に自分が飲まれていく。
 
 
 
 

そして、その感情は、突然降ってきた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 

「さびしい」
 
 
 
 
 
 

沖縄移住
 

東京では、気心知れた友人たちと5人でシェアハウスをしていた。

私が悩み落ち込んだときは、誰かが相談にのってくれる。お酒を飲んで、だらだらとテレビを観て、一緒に笑ってくれる。
 

シェアハウスだけじゃない。友人は東京中にいた。

その日に突然連絡しても、飲みに付き合ってくれて、快く家に泊めてくれる友人たちがいる。その日に突然呼び出しても、話を聞いてくれてご飯を食べさせてくれる先輩たちがいる。
 
 

悩むことはあっても、寂しさを感じることなんて、東京ではほとんどなかった。
 
 
 

そんな友人たちの元を離れて、やってきた沖縄。
 
 

たまに会って楽しく飲める人はいても、気軽に声をかけて会いに行ける人はいない。
 

仕事の話はできても、仕事の悩みを話せる人はいない。
 

一緒に住んでいても、毎日一緒に笑い合える人はいない。
 
 
 

とても久々に、「独り」を感じた。
 
 
 

そして私は、毎晩のように東京の友人たちに電話をかけていた。
 

「なぁ」
「どうした?」
「なんか寂しいねんけど」
「東京帰ってきたらいいやん」
「それもうネタやん」
「確かに」
「ただの移住ドッキリやん」
「悪くはない」
「確かに」
 

そんな会話で笑いながら、寂しさを紛らわせた。
 
 
 

東京に、沖縄ほどキレイな海はない。
 

自然は少ない。都心部の空気は悪い。電車は満員。お店は満席。どこに行っても人混み。
 
 

そんなクソ息苦しい東京が、とても恋しかった。
 
東京にいる友人たちが、心の底から恋しくなってしまった。
 
 
 

そこで、気付いた。
 
 

キレイな海も
美しい夕焼けの空も
海辺のオシャレなカフェも
美味しい沖縄料理も
 

大好きだけど、それは、私の心を完全に満たすものじゃない。
 
 
 

土地への愛着を生むものは、「人」だ。
 
 

会いたい人がいるから

一緒にいたい人がいるから

大好きな人たちがいるから
 

私にとって、その場所が大切になるんだ。

 
 

沖縄移住
 
 

だから私は

恋しい友人たちの待つ東京へ帰りました。
 
 
 

なんてオチには意地でもしてやらない。
 

感傷に浸っている風なことを書いているが、冷静に考えれば沖縄より東京にいた時間のほうが断然長いのだから人も場所も多少恋しくなるのは当たり前。新たな場所へ来るたびに東京シックを嘆いて出戻りしていたら私は一生東京を出られない。
 

そんなのイヤだ。私は知らない場所に行き新たな人との出会いに心を湧かせ酸いも甘いもすべて嘗め尽くして引き続き全力で生き抜きたいのだ。
 
 

心満たされず寂しい理由さえ分かれば、あとはその原因を潰せばいい。
 

私が求めているのは「人」である。

とにかく、この地でもっと広く深く人とふれ合いたい。
 

「まずは、ちゃんと友達をつくろう」
 

そう決めた私はこの1か月半、行く先々で出会う各種皆さまに「心の底からめちゃくちゃ友達ほしいですしどうかたっぷりかまってください」と恥を忍んで喚き散らした。
 

沖縄移住
 

ポケモンGOの旅に誘ってくれる友達ができた。
 
沖縄はポケモン過疎地も多かったが、ビーチ、那覇、そして那覇から車で行ける超穴場の瀬長島には、レアな奴も含めてたくさんのポケモンが潜んでいる。その日のうちにレベル1から11まで爆上げした。1日で70種類ゲットした。写真の2人とは今のところ週1ペースで出かけている。
 

沖縄移住
 

原稿が進まなさ過ぎて吐きそうだったので、取材と称して沖縄北部の澄んだ海でシュノーケリングをした。
 

連れ出してくださったのは、私より2年先に沖縄へ来た先輩移住者のご夫婦。仲睦まじいおふたりの姿を見て、猛烈な結婚願望が湧き上がるのを感じながら魚と戯れた。
 

沖縄移住
 

家でも最初は自室に引きこもっていたけど、リビングに出てシェアメイトと関わる時間を徐々に増やした。
 

同居人の1人、ライフセイバーのお兄さんは写真のような魚をよく持って帰ってきてくれる。そのお土産を遠慮なくムシャムシャと食べながら、お兄さんと仕事や漫画の話で盛り上がる。

人と食卓を囲むのは、やっぱり楽しい。
 
 

内へ内へとこもっていた自分の足と心を、外へ外へと向けていった。自分から手を伸ばしたら、その手を優しく握り返してくれる優しい人が、沖縄にはたくさんいたのだとようやく知った。
 

人とのふれ合いが増えれば増えるほど、自分の精神状態は分かりやすいほどに回復していった。
 

ようやく、少しずつ毎日が楽しくなってきた。

東京の友達に電話する時間は、たぶん、少しずつ減ってきている。
 
 

**************
 
 

きっと、これからもまたいろいろ悩む。
 

悩みながら、それでも当分沖縄にいると思う。

悩みながら、それでも当分ライターを続けると思う。
 

悩みながらもきっと、沖縄生活はこれからもっと楽しくなっていくんだと思う。
 
 

「東京から沖縄に移住して、私はのんびり生きやすくなりました」
 

そんな美談を書けると思っていたけれど、そう言い切るには移住早々悩み葛藤することがちょっと多かった。
 
 

そんな苦悩をようやく乗り越えつつある今
 

「東京から沖縄に移住して、私は意外と悩んだけれどこれから楽しく生きていけそうな予感だけはデカくなりました」
 

くらいのエセ美談なら、心に嘘をつかず伝えられる気がしている。
 

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この記事を書いた人

真崎 睦美

真崎 睦美  

フリーライター。1989年大阪生まれ京都育ちの26歳。立命館大学国際関係部卒業。2013年に大学を卒業した後は、子ども教育・不登校支援の仕事に従事する。新卒2年間で3社を退職し、自らの組織不適合を疑って2015年4月にフリーランスへ転向。昔から「書くこと」が好きだったため、勢いでライターになる。ついでに副業で朝キャバ嬢になる。源氏名はマキ。入店から半年で店が潰れて専業ライターになる。2016年6月より東京から沖縄に移住。

ありきたりじゃない旅Guide

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