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メランコリック・メルヘン・ロード 〜宇都宮編〜 vol.2

歴史とポップが交錯する、ダーク・ファンタジーな石窟

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この連載は... 「かわいい」と「スイーツ」、そしてわが子を愛する1990年生まれの大石蘭が、新しいときめきと癒しを求めて飛び出しさまよう旅のエッセイ! いつか見た夢の景色、甘い魅惑のお菓子、誰も知らない私だけの秘密の場所……日常を抜け出して妄想を繰り広げれば、そこはもう小さな旅の入り口。宇都宮編!

大谷資料館

石よりスイーツ?の、不純な動機

せっかく宇都宮まで来たことだし、宇都宮駅から少しだけ遠出して、行ってみたい場所があった。

大谷資料館。大谷石という、岩にまつわる資料館だ。

大谷石は、栃木県宇都宮の大谷町付近一帯から発掘される、軽石凝灰岩の一種。古くから建材として使われ、その歴史は6世紀ごろまで遡るという。大谷資料館では、その大谷石の歴史が紹介されていたり、地下の採掘場跡が公開されていたりする。

……と、こう調べてみたものの、正直言うと、大谷石という石自体にはそこまで興味がなかったのだった。この旅の中で探してきた、「かわいい」とか、「ファンタジー」とか、「癒し」とは無縁の、無機質な場所だと思っていた。

ただ、併設のカフェがなかなかおしゃれそうで、宇都宮スイーツの一軒目として行ってみたかった。それならせっかくだから大谷資料館も見ておこう、というなんとなくの軽い気持ちで、私はバスに乗ったのだ。揺られること30分。

 

資料館最寄りのバス停から、ハロウィン仕様のよだれかけをつけたままのお地蔵さんを横目に見つつ、さらに少し歩いたところにその資料館はある。石の資料館というだけあって、近くにはへんな石のオブジェ的なやつが多い。

そして、資料館のとなりに突如として現れる、「ROCKSIDE MARKET」というおしゃれなカフェ&ショップ。ここに来てみたかったのだ。シアトル系コーヒーショップのような、洗練された外観。東京でもここまでフォトジェニックなカフェはなかなか少ないんじゃないだろうか。

ジェラートやガレット、ドリンクなどのメニューもおいしそうで、看板もかわいい。栃木県の名産品を使っているものもあり、こだわりを感じる。

ここでひとやすみするのは、資料館を観たあとのお楽しみに。

ロックサイドマーケット

 

ミーハー魂をくすぐる資料館

資料館の館内に入ってチケットを買うと、ノースリーブ姿の私を見て、受付の人が「上着持ってます?地下坑は10℃でけっこう寒いので、よかったら入り口に置いてあるブランケットをお持ちくださいね」と言った。少しこわくなってくる。

ひとりで来てよかったんだろうか……と思いながら地下坑へいざ向かおうとしたそのとき、入り口の前に映画のポスターが数枚貼られているのに気がついた。予想外にポップ。

そして目に飛び込んでくる、映画「るろうに剣心―京都大火編―」のポスター。

「当館で撮影された映画のポスターです。燃え盛る炎の志々雄の隠れ処に使用されました」……ですって?

映画館で観たことのある映画だったのでびっくりした。藤原竜也(志々雄役)大好きだもん。志々雄の隠れ処って、あの、めっちゃ人が死んでる場所だ……。

どうやらここは、映画やミュージックビデオの撮影などでよく使われているスポットらしい。ポスターの横には、ここを撮影に使った作品リストが貼られていて、その中には東京事変の「喧嘩上等」のミュージックビデオも入っていた。

うそぉ。これが入ってるMV集持ってる……。

思いがけず、藤原竜也と椎名林檎という、私の二大・敬愛する人が撮影で使ったということを知り、テンションは一気に上がる。

――ここまで来てよかった……!

ここは、もう、私の聖地だ。

東京事変るろうに剣心

言われたとおりブランケットを借り、そっと地下坑入り口のドアをくぐった。石の階段を下りてみると、本当に寒い。石でできた床は気を抜くと滑りそうで、おそるおそる足を進める。暗い。遠足の小学生たちが行列をなして、肝試しでもするみたいにはしゃいでいる。

ここ、けっこう本気でこわい。不穏なシーンで使われるのもうなずける。幽閉されているような気分になる。

でも、ふだんこんな場所に入ることはないから、どこかで楽しんでいる自分もいる。小学生たちがハイテンションになるのもわかる。自分がどこにいるのかわからなくなるようで、それは幻想的でもある。アリスが迷い込んだうさぎの穴の底の世界って、こんな感じだったのかな。しんと深く、突然何かが出てきそうで、出口がわからなくなりそうな。不思議な生き物たちに出会ったりでもしたら、夢中になって外の世界を忘れてしまいそう……。

大谷資料館

岩の説明書きなんて頭に入らないよ……と、ふと壁の貼り紙を見ていくと、そこには「ここで板野友美さんのPVが撮影された所です」「ここで三代目J Soul Brothersが……」と、丁寧な説明が……。意外とミーハー。遠足の小学生、大喜び。

地上まで戻ると、さっきは気づかなかったけど、映画ポスターのそばのテレビには、「当館で撮影された作品を放映中」というキャプションがついていて、画面の中で板野友美が歌っている。

殺されそうに淋しい空気が、いっきに打ち破られた。

ひんやり地下を出たら、ひんやりジェラートを

ロックサイドマーケット

外は地下と15度以上の温度差。熱気にくらくらする。「ROCKSIDE MARKET」でい

カフェと一緒になっているショップは、栃木県の工芸品や個人作家などのローカルな製品を、カジュアルでスタイリッシュに取り扱っている。

全体的に、歴史とポップが同居している最先端の場所だ。大谷資料館。

カフェでいちごと黒ごまのジェラートを買い、オープンテラスに座ってみた。

カップに盛られたジェラートが、ごつごつそびえる岩みたいに見える。しんと冷たい地下の岩。太陽の熱に溶かされる前に、その岩をスプーンで崩す。

ここは宇都宮のダークファンタジー。怖いほど非現実に飛び込んで、異世界に浸れる場所。

ひとりで来るよりも、一緒にバカできる人と来たほうが楽しそうだ。

公式サイトの中の「撮影実績」のページから、自分の好きなアーティストや作品を事前にチェックしてぬかりない下準備を。

そして、ミュージックビデオごっこをしながら写真を撮ろう。

 

 

-To Be Continued-

 

 

◆大谷資料館
〒321-0345 栃木県宇都宮市大谷町909
TEL:028-652-1232
FAX:028-652-4851
開館時間 9:00〜17:00 (最終入館は16:30まで)
http://www.oya909.co.jp/

◆大谷資料館ロックサイドマーケット
〒321-0345 栃木県宇都宮市大谷町909大谷資料館敷地内
TEL:028-688-8604
OPEN 9:30〜17:00(16:30 L.O.)
http://www.oya-rsm.com/

今月の旅のMAP

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この記事を書いた人

大石 蘭

大石 蘭  

1990年福岡県生まれ。東京大学教養学部・東京大学大学院修士過程修了。
少女文化と原宿が好き。大学在学中に雑誌『Spoon.』に掲載の自伝的短編エッセイ「そんなお洋服ばっかり着ていると、バカに見えるよ」が同年代の女子をはじめ、クリエイターの注目を集める。その後、雑誌・書籍などで本格的に執筆活動をはじめる。
2014年に初の著書『妄想娘、東大をめざす』(幻冬舎) を刊行。自身の大学受験エピソードを描いたコミックエッセイとして話題に。
2015年にフリーランス活動をスタートするとともに、結婚、出産。雑誌やWEBなどでエッセイ、イラストコラム、イラストレーションを執筆・制作しながら現在も活動中。一児の母。

ありきたりじゃない旅Guide

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