メニュー閉じる

日本で一番巻き込み力の高い盆踊り「郡上まつり」で朝まで踊り明かそう! vol.3

助平(スケベ)が集まる盆踊り!?「郡上おどり」で朝までフィーバーナイト 〜踊り体験編〜

  • Facebook
  • Twitter

この連載は... 多くの盆踊りの達人が「盆踊りにハマったきっかけ」としてあげる『郡上おどり』。その秘密は、郡上おどりが持つ「巻き込み力」に隠されているようだ。輪に入ることを遠慮してしまいがちな初心者や外来者を誘い込みトリコにするという。本連載では、東京会場と本場・岐阜の両方に初参加し、その魅力に迫る。

郡上おどり

▶︎ 1記事目はこちら
▶︎ 2記事目はこちら

 

 郡上の「助平(スケベ)」は踊り好き

「“踊り助平(スケベ)”っていうと、なんかヤラシイ人みたいですよね」

私がそう言うと、呉服屋のおかみさんは笑いながら「“助平”って言葉にはね、“ある物事を強く好む”って意味もあるのよ」と答えた。

調べてみると確かに、“助平”という言葉は「江戸時代から使われていたが、本来はあることに非常に強い興味を示すことを指していた」のだそうだ。

さて、そんな「踊り助平」が集まると言われるお祭り、岐阜の「郡上徹夜おどり」に、低予算かつノープランで乗り込んだ(前回記事を参照)私は、立ち寄った呉服店で、おどり開始までの時間をつぶしていたのだった。

 

盆踊りは1を100にする作業。シンプルだからおもしろい

郡上おどり

「郡上徹夜おどり」のおどり会場は、商店が立ち並ぶ細い路地だ。この道で、縦に長いO字型のベルトコンベアを作るようにして人々は踊り進む。

踊り開始の20時となり、会場へと向かった私を待っていたのは、ベルトコンベアの上で渋滞を起こしている、「踊り助平」たちだった。会場は、踊る人とそれを観る人で溢れかえっており、もはや路地の奥に進むには踊るしかないような状態だった。

郡上おどり

見ると、若い女性や外人さんも多い。なかには、10代そこそこに見えるのに、身のこなしに貫禄さえ感じられる女の子もいた。

郡上おどり

8月中旬の郡上の夜は、少し涼しさを感じるくらいで、踊るにはちょうど良かった。この旅の本懐を遂げるため、私も気合を入れて輪に飛び込む。

青山ですでに2日間踊っているので、振りは大体覚えている。

……うん。徐々に感覚を取り戻してきた。

郡上おどり

やぐらの上では、小学生ぐらいの子供たちが、お囃子を演奏していた。地元の子供たちだろうか。音頭取りももちろん、その中のひとりが担当していた。幼い声ながら、見事な節回しで歌い上げている。

郡上おどり

右上ののれんに「今晩の踊り審査項目は、げんげんばらばらです」と書いてあるのは、郡上おどり保存会の方々による、踊りの審査のことだ。

郡上おどりには、「踊り審査」の時間が設けられており、この時間になると保存会の人が輪に入り、筋のある人を見つけては「免許」を与えるのだ。踊り好きにはたまらないシステムである。

踊ラーたちは、いつでも待っているのだ。誰かに「踊り、上手ですね」と言ってもらえるのを。免許なんてその最たるものだと思う。ああ、私も欲しい(今回ルールを何も知らずに行った私は、審査を受け損ねてしまった)。

郡上おどり

かくかくしかじかあって、郡上八幡に来る直前まで高知でよさこいを踊っていた私は、踊りながら「よさこいはマイナスを1に、盆踊りは1を100にする作業だな」と思った。
▶︎ 【死ぬかと思った】運動不足の私が高知で「よさこい」を踊った結果

難易度の高いよさこいは、「完成に向かっていく」時間が多いけれど、すぐに覚えられる盆踊りは、「完成したものに磨きをかける」作業ほぼそのものだ。シンプルなものだからこそ、アレンジも効いてくる。
郡上おどりは、盆踊りのなかでも特にシンプルな踊りなので、そんな盆踊りの楽しさを味わい尽くすことができる。

よさこいにも相当入れ込んだのでどちらの魅力も知っているけれど、体力も根性もない私が長くお付き合いできるのは、やはり盆踊りになりそうだ。

郡上おどりは、時期が近づくと毎週のように事前講習会があり(徹夜おどり期間中は毎日開催)、これに参加すればさらに踊りを磨けるので、もっと楽しいのだろうなぁ〜〜。

 

にぎわう祭りと凍てつく私

踊り開始時間から2時間。22時になり、踊り疲れた私は、休憩と晩御飯がてら屋台を見に行くことにした。

郡上おどり

郡上おどり

街じゅうの路地には、焼きそばやイカ焼きなどの主食系から、ベビーカステラ、かき氷などの甘味系まで、ありとあらゆる種類の屋台が揃っていた。

郡上おどり

そのなかに、「冷凍みかん」の看板を掲げる店を見つけた。冷凍みかんは、小学生のころから大好物だ。空腹にもかかわらず、前菜を楽しむぐらいの軽い気持ちで、私はそれを買うことに決めた。

しかし、お店の人からそれを受け取った直後、すぐに後悔することになった。

店員から渡されたのは、手のひらサイズの冷凍みかんではなく、特大サイズの「冷凍みかん缶詰」だったのだ。

郡上おどり

水の流れる小路に座り、30分かけてそれを食べ終えた。鏡は見ていないが、食べ終わった時、私の唇は真っ青だったに違いない。

旅の疲れと踊り疲れに加え、体温の急激な低下により、圧倒的な眠気に襲われた私は、仮眠をとるべく一路休憩所へと向かったのだった。

 

徹夜4日目、にぎわう真夜中

 

 

 

 

「はぁ〜いっぱい踊ったわねぇ〜」

「久しぶりだからもうクタクタよ」

「え、でもまだいけるでしょ?」

「もちろんよ!!」

 

薄暗い部屋のなか、ヒソヒソ声の、でも、興奮を抑えきれないようなおばちゃんたちの声が聞こえる。どうやら隣に陣取りをしていたマダムグループが荷物を取りにきたようだ。

まどろむ意識のなか、携帯で時間を確認すると、
「……ん!? 2時!?」

やばい。3時間も寝ていたのか。間もなくフィナーレの4時を迎えてしまう。
慌てて飛び起き、まだ眠たい身体にムチ打って踊り会場へと向かう。

「こんな時間にまだ活動してるのは、よほどの踊り好きだけだろう」
そう思って通りに出て、驚いた。

郡上おどり

ピークは過ぎたものの、表通りはまだ人で賑わっていた。深夜2時をまわっているというのにだ。

郡上おどり

屋台もほぼ全て店じまいをせず、営業を続けているようだった。
徹夜踊りは4日間。今日は最終日なので、店員さんも相当疲れているだろうに……。

郡上おどり

もちろん、なかには遊び(踊り?)疲れて、路上で寝ている人たちの姿もあった。

郡上徹夜踊り常連の知人によると、踊り会場では、「24時にかけて人数がじわじわ減っていき、それ以降は、ほぼ真性の踊り助平しか残らない」という。
私は、彼らの姿を一目とらえるため、早歩きで路地を進んだ。

 

踊りは、フィナーレへ

郡上おどり

会場に到着すると、……いるいる、踊り助平たちが。
さすがに人は減っているが、閑散としている様子はない。最終日のラスト2時間だからというのもあるのだろうが、なかなかのにぎわいを見せている。

郡上おどり

踊っている人たちを見てみると、真性の踊り助平に加えて、観光客もいる様子だった。踊りのつたなさや浴衣の着こなしでなんとなく分かってしまう。まぁ、私もそのうちの一人なのだが。

郡上おどり

残り少ない体力を振り絞り、輪のなかに飛び込む。
長時間踊っている人が多いからか、みな迷いはなく、踊りに没頭している様子だ。

郡上おどり

路地の内側を向いて踊ると、ベルトコンベアの反対側を進む人々と目が合う。距離が近い。この輪に残っているのは、ほぼ真性の踊り好きのみだ。つまり、周りの踊り手はほぼ全てが好敵手。

彼らと至近距離で踊る緊張感たるや、とても心地がいいものだった。

「そこの、なかなかやるじゃないか」

「いやいや、何をおっしゃるそちらこそ」

そんな会話が、そこでもかしこでも、踊りだけで交わされているようだった。

郡上おどり

そして、そのときはふいに訪れた。
最後の曲(郡上おどりでは、祭りの最初と最後にかかる曲が決まっている)「松阪(まつさか)」が流れ始める。やや息切れ気味の踊り手たちから「もうそんな時間か」「いよいよラストだ〜」という声が漏れる。

 

手を打つ音、浴衣の布が擦れる音、カラリと響く下駄の音、
それらがひとつになり、疲れと眠気と夜明け前の闇のなかに溶けていった。

 

 

 

 

祭り終了のアナウンスが聞こえると、踊り助平たちは満足げな表情で拍手をし、一斉に帰っていった。
経験上、人は、若ければ若いほど解散に時間を要する生き物だということを私は知っている。しかし年齢を重ねると、和よりも自分の体力や時間を優先するようになるので、さっさと帰るようになるのだ。平均年齢高めの踊り助平たちがいなくなるのは、あっという間のことだった。

郡上八幡を出発する列車は4:55発だ。
ほんのすこしの名残惜しさを感じつつ、私もその場を後にすることにした。

郡上おどり

踊り会場から徒歩15分ほどの場所に、郡上八幡の駅はあった。
道中、同じように駅に向かうひとが数人いたので、道は暗かったけれど怖い思いをせずに歩いてくることができた。

郡上おどり

駅のホームには、肩に手ぬぐいをかけ少しくたびれた顔をした人たちが、電車がくるのを待っていた。当然、徹夜踊りに朝まで参加していた猛者たちだ。

それにしても、こんなにたくさんの人が、私と同じ無茶なスケジュールで祭りに参加していることに少し驚いた。それだけヒキのあるお祭りなんだと思う。

私の郡上おどりは、まだ始まったばかりだ。でもそれは、これからまだまだ楽しくなる余白があるということ。次は講習会から参加して、審査も受けて、もっともっとその旨味を味わい尽くそう。
……そう心に決めたかは知らないが、次回はもっとちゃんと体力があるときに来たいな、と思いながら、私は、やってきた「現実行き」の電車に乗り込んだのだった(もちろん、着席してすぐに寝た)。

 

▶︎ 盆踊りが若者に浸透しない理由が「ハードルの高さ」なら、「郡上おどり」はその突破口になる
▶︎ 低予算で美味しいとこ取り! 岐阜「郡上徹夜おどり」宿なし弾丸トリップ 〜アクセス・会場レポ編〜

 

◆郡上八幡観光協会
〒501-4222 岐阜県郡上市八幡町島谷520-1
TEL:0575-67-0002
FAX:0575-67-1771

今月の旅のMAP

3/3

前のページヘ
                                        

この記事を書いた人

坂口 ナオ

坂口 ナオ  

大学卒業後5年間事務員として働いていた特許事務所を辞め、フリーライターに転身。その理由は「旅をしながら生きたかったから」。独立後は、イベントレポートやスポット紹介記事を多く手がけ、体当たり系ライターとしてのポジションを確立。「未知なる日本を発掘する」がコンセプトの連載執筆で、目的だった「旅と仕事の両立」を達成する。現在は主にライフスタイル系メディアの編集をしながら、盆踊りや浜田省吾に興じる日々。

ありきたりじゃない旅Guide

Wanderlustのアカウントをフォローして
連載を見逃さずに読もう!

facebook

twitter

instagram

TOPへ