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北と都会のデュアルライフ vol.2

社会人になることへの不安をつつみこんだ運河の街【北海道・小樽】

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この連載は... 新卒で入った会社を2年で退職してブロガーとし​て独立したあんちゃが、場所にとらわれない働き方をしながら東京と地元・北海道でのデュアルライフ(二拠点生活)を送る様子を発信。思い入れのある場所とともに、その時の葛藤や決断を記していきます。

小樽

思えばだらしない大学時代だった。

 

サークルとバイトをこなし、毎日起きるのは昼の12時。授業をサボってサークルの部室に行き、だらだら喋ってバイトへ向かう。そんな大学生活だった。

 

「なんのために大学へ行ったんだ」

いま聞かれても、「なんでだろう」としか言えない。きっと、「みんなが行くからわたしも行くのが当たり前」だと思い込んでいたのだろう。

 

そんなだらだらしたわたしの大学生活は、大学3年生の冬になるにつれて、少しずつ空気が引き締まり始めた。

 

ぼんやり運河の街を見下ろした大学3年の夏

小樽

わたしは北海道の小樽市の山の上にある小さな大学へ通っていた。

 

札幌の自宅から、往復3時間以上かかる場所。

毎日海沿いを走る電車に乗り、小樽駅に着くと、そこからまた大学まで30分かけて歩く。

 

なんせ大学は山奥にあるので、行きは結構急な登り坂である。

その坂は、「地獄坂」と呼ばれていた。

小樽

夏は日照りをさえぎるものもなく汗を流しながら、冬は足が埋まるような深い雪をかきわけながら登らなければならない苦しさからこの名前がつけられたそうだ。

冬道はバスだってエンストするくらいだから、この坂は「地獄坂」なのだ。

 

そんな通学も2年もたてば当たり前のようになって、ただただ流されるように大学生活を送っていた。

 

「もうすぐ就活かぁ」

 

大学3年の夏。学校のテラスから小樽の街を見下ろしながら、自分の将来についてあまりに無関心な自分自身に、ためいきをついていた。

小樽

インターンシップに参加する友人、進路が決まっている友人、就職に高い関心を持つ友人。みんな、これから迎える未来のために、動き始めている。

 

なんだかんだ自由に過ごした大学生活が、終わる。

永遠に続くと思っていたこの生活から、もうすぐ自分の進む方向を決めなければいけない時期が迫ってきていたのだ。

 

大学から駅に向かって山道を下りながら、「自分はこれから何がしたいのか」ぼんやり考えた。

でも、なにも思い浮かばない。なにもしたいことがない。やりたいことがない。

 

いま考えれば当たり前だ。

今まで「自分がどうしたいか」よりも「まわりがどうするか」ばかり優先して物事を決めていたからだ。

いまさら「自分はどうしたいか」なんて問うても、自分で決められない。

 

「みんなは地元に就職するのかな。上京はしないのかな」

そんなことばかり気にかけていた。

 

そして、思い詰めるといつも運河沿いの道を歩いた。

小樽

夏でも涼しい小樽の運河は、いつもゆったりとわたしの不安を包み込んでくれていた。

 

降り積もる雪の中で決めたこと

小樽

自分の身長以上に雪が積もる大学3年の12月、就活が解禁された。

 

わたしは、ただなんとなく就活サイトを眺めた。

どんな仕事がしたいかわからない。何がしたいかわからない。どんな社会人になりたいかわからない。

 

でも

「東京に行ってみたい」

という漠然とした夢がでてきた。

 

なぜ行きたいかと言われても「なんとなく」としか言えない。

でも日本の中心部で、生きてみたい。

 

田舎者が都会を夢見る典型的な人間だなぁと自分でも感じた。

でも、仕事とか就活とか抜きにしても、東京に行ってみたかった。

 

いまおもえば、「他人に流されて生きる自分のことを誰も知らない場所」に行きたかっただけなのかもしれない。

でもこれは、まわりの友人が東京に行くからとかではなく、初めて自分の意思で自分のこれからの人生を決めた瞬間だった。

 

もし東京にいけば、この雪やこの街ともしばらくお別れになる。

そう思うと、すきま風だらけで寒々しかったこの大学も、吹雪で2m先の視界が見えなくなるこの街も、少し愛おしく感じた。

 

最後の坂道をくだる

小樽

結局わたしは、東京のIT企業に就職を決めた。

 

大学4年生になって、単位もどうにかギリギリとり終わった。

 

小樽での生活が、終わる。

 

卒業式の翌日には、東京に旅立つ飛行機をすでにとってあった。

まだ雪が残る大学4年の3月の終わりに、大学から駅へ向かう最後の坂をくだった。

 

わたしの4年間はこれで本当によかったのだろうか。

もっとやれたこと、たくさんあったんじゃないだろうか。

これから東京でうまくやっていけるのか。

 

坂を下りながらそんな不安や後悔が急に押し寄せてきた。

でももう、この坂を登って、この大学に通うことはない。

 

人生の選択肢の幅を増やすための“上京”

そうしてわたしが上京して2年が経った。

 

東京での生活は、めまぐるしく毎日が過ぎた。でもやっと、「日本の最先端の場所で生きている」というワクワクを感じられるようになった。

なんだかんだこのタイミングで、地元から上京できたことは良い経験だったのかもしれない。

若くてなんでも挑戦できるうちに、フットワーク軽く環境を変えてみるのは自分の人生の選択肢の幅をより広げられる。

 

地元か東京かで就職を迷っている学生がいるのだとしたら、わたしは迷わず上京をおすすめしたいとも思う。上京して大変な思いをしたって、その経験は絶対あとで活きてくるからだ。

 

わたしは上京してから、まだ一度もあの小樽の街に戻っていない。

でもたまに小樽での生活を思い出すと、なんとなくモヤモヤした感情が沸き起こってくる。

あのときの楽しさとけだるさと不安が入り混じっていた瞬間は、もう絶対に味わえないからだ。

 

だからわたしは今日も東京で筆を進めながら、不安をつつみこんでくれたあの運河の街を思い出しては、よくわからないモヤモヤな感情と一緒に生きている。

 

もう一度運河の街を訪れたら、このモヤモヤは晴れるのだろうか。

小樽

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この記事を書いた人

あんちゃ

あんちゃ  

プロブロガーとして活動中。ブログ開設から4ヶ月で37万PV,収益19万円を達成。
現在はブログをメインに、Webメディアの立ち上げやブログ・メディアのコンサルティング、外部媒体での執筆も行っている。

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